東京高等裁判所 昭和27年(う)3912号 判決
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〔判旨〕昭和二二年法律第一二四号によつて刑法の明文上から連続犯に関する規定が削除された今日においても、なお、事実上数個の行為があるに拘らず、法律上は一個の犯罪を構成するに過ぎないものと解さなければならない場合のあることは勿論であつて、例えば、刑法第二二〇条の人を逮捕し監禁した場合(大正六年一〇月二五日大審院判決)、同法第二五六条の賍物を運搬し、寄藏、故買した場合(昭和一〇年一〇月二三日同判決大正一一年四月六日同判決)の如き所謂包括一罪、あるいは、犯罪の構成要件の性貭上同種の行為の反覆することが当初から予想されている場合、例えば、同法第一八六条の常習賭博罪(大正一一年四月六日同判決)の如き所謂集合犯、あるいは、数個の実行行為が包括的にただ一回構成要件を充足させるに過ぎないと認められる場合、例えば、数個の窃盜行為が極めて短時間のうちに同一場所で同一機会を利用用して行われたものでそれが同一の所有又は同一の管理を侵したもので同一の犯意の発現たる一連の動作であると認めるのが相当である場合(昭和二四年七月二三日最高裁判所判決)の如き所謂接連犯の如きはすなわちそれである。そして論旨は原判示被告人甲の各個の行為は(イ)日時の点から見ればいずれも接近しており、(ロ)本件の動機、態様から見ても単一の意思若しくは継続的意思の発動に基く所為と認めるのが相当であり、(ハ)被害法益は単一であり、(ニ)被告人甲の行為の態様も同じ型にはまつたものであるから、原判示被告人甲の各所為は法律上これを包括して一罪と認めるのが相当であり、原審がこれを併合罪として処断したのは罪数に関する法律の解釈を誤つたものであると主張するのであるが、被告人甲の所為は昭和二五年四月末頃から同二七年六月七日頃の二年余りの長期間に亘るのに、その犯行の回数は五十回余りに過ぎず、その間の各個の犯行と犯行とは必ずしも甚だ近接しているものとは認められないのみならず、本件犯行の共犯者は原判示の如く、あるときは相被告人乙のみの場合があり、あるときは同乙、丙の場合があり、あるときは同丙の場合があり、あるときは原審相被告人丁の場合があり、あるときは丙、戍の場合があり、あるときは丙、已の場合があり、あるときは已の場合があるのであつて、行為の態様は必ずしも同一であるとはいい得ないし、また本件において被告人甲は、各種滯納税金を浜松市のために徴集し、これを保管するに至るに従い、随時自己の必要に応じてほしいままに着服橫領したものであることが明らかであり、被告人甲において当初からこれを一括して着服橫領しようとする包括的犯意の存した事跡は到底これを認めることはできない。従つて原審が被告人甲の原判示各所為をもつてそれぞれ独立した一個の犯罪と認めこれらの各所為は併合罪の関係にあるものとなし、刑法第四五条第四七条を適用していることは相当であり、論旨の引用する判決例は本件には適切でありそれ故論旨は理由がない。
〔説明〕業務上橫領罪において包括一罪を認定しておる判決竝に包括一罪を認定する要件が何であるかを示した判決等については、すでに本誌第二四号掲載の第二六事件の説明に詳細述べてある。本判決も包括一罪の場合の存することを否定するものではない、只単一又は継続した犯意が認定できないとしているのみ。問題は事実認定の如何に帰するが、これだけの事実では右の犯意が認められないとした所判居本決の価値がある。